冷徹執事様はCEO!?
「…もう、助けてくれないの?」思わず未練がましい台詞が口をついて出た。

「なんで俺が?」田中の冷ややかな口調に思わず心が折れそうになる。

「む、昔のよしみ、ってヤツよ」

「燁子には新しい執事がいるじゃないか。あいつに助けてもらえよ」

「ユウキは駄目!匠ちゃんの言いなりだもん!」私は鼻の頭に皺を寄せて言う。

「もう関係ないから。悪いな」田中は二コリと悪魔の笑みを浮かべた。

まあ、そりゃあ、そうだよね。私も「関係ないくせに」なーんて可愛げない事いっちゃったし。

「ケチ!もうイイわよ」

私はくるりと背を向けて足早にその場を立ち去る。

言葉とは裏腹に涙がボロボロと零れていく。

もう少しで田中の前で泣き顔を見せるとこだった。


「燁子!」

不意に腕を掴まれる。

思わず涙でぐしょぐしょになった顔で振り向いた。

「やっぱり、また泣いてる」田中は呆れたように肩で息をついた。

「か、関係ないって自分で言ってたじゃない」私は俯いて顔を隠した。

「来い」

田中は私から鞄を奪い取るとグングン先を歩いていく。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

私は小走りで後を追いかけていく。

やっぱり私を放っておけないんだから、田中ったら。

心の中でほくそ笑む。
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