冷徹執事様はCEO!?
しかし、出口とは逆にお屋敷の方へと歩いていく。

「ちょっと!田中!私帰らないからね」

田中は無視だ。

「田中!裏切る気?!家に送り返したら酷い目あわせてやるんだから!」

田中はピタっと脚を止める。此方へ振り向き、すぐそばまで歩み寄ってきた。

「な、なによ」

相変わらず無表情で何を考えているか解らない。思わず怯んでしまう。

「酷い目って?例えば?」田中はかがんで私の顔を覗きこむ。

ち、近い。

「それは…秘密」私は横に視線を向ける。

「へえ?それは興味深い。どんな目にあうのか試してみようかな」

「…ホント意地悪ね」困り果てて私は俯いた。

「燁子が悪い」

田中がボソっと呟いたが何を言ったのか聞き取れなかった。

くるりと向きを変えるとそのままスタスタと歩いていく。

田中はお屋敷には行かず、その手前にあるガレージへ入って行く。

ああ、車を取りに来たのか。

送り返されず私はホッと胸を撫で下ろす。
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