冷徹執事様はCEO!?
「乗って」

「はい?」

私はヘルメットを手渡された。田中はバイクにひらりと跨がる。

「あれ、車じゃなかったんだー」

「混むから」田中はフルフェイスのヘルメットをかぶる。

どうしよう…私バイクに乗ったことないや。

乗るのに躊躇しているとエンジンがかかる。

「それで、どうされますか?燁子さま」

執事口調で尋ねて来るところが 癪にさわる。

無言でヘルメットを被ると、後ろの席に乗り込んだ。

鞄を間に挟みこむと恐る恐る田中のウエストに手を伸ばす。

「出して頂戴」

田中は私の手首掴むと、しっかりと自分の身体に密着させる。

「畏まりました。燁子さま」

バイクのアクセルを2、3度ふかし、急発進させた。


人生初のバイク

憧れてた彼とのツーリング

…しかし、それは地獄だった。

生身の身体で感じるスピードに、恐怖のあまり声もでない。

周囲の景色も全く目に入らなかった。

その上、極寒。

真冬にバイクに乗るなんて正気の沙汰じゃない。
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