冷徹執事様はCEO!?
「ふぇー…」

湯船に身を沈めるとだらしない溜息が漏れる。

今日はよく働いたなあ。

そして今、何故か田中の家にいるから人生って不思議。

あんなに恋焦がれていた田中と念願の再会を果たしたものの、実際会えば性悪男だった。

会えない事で思い出が美化されてたのだろう。

いや、使用人だった頃の方がまだ優しかった。再会してからは本当に意地が悪い。

こんな事なら、家で接待してた方がまだマシだったかな。

最悪なお正月だ…。

私はブクブクと湯船に顔を沈めた。


お風呂から上がると、お気に入りのピケのルームウェアに着替える。

リビングに戻ると、田中はジッとノートパソコンを見つめて、一心不乱にキーボードを叩いている。

おそらく仕事をしているのだろう。真剣な表情なので、話しかけるのも気が引ける。

その姿を横目に、持って来た化粧品で肌を整える。

それが終わると、冷蔵庫からミネラルウォーターを出して喉を潤した。

どうしよう。田中の仕事が終わらないとソファーで眠れないよ。

「あの…田中、私、寝るね?」勇気を出して話しかけてみると、「ん」と、気のない返事が返ってくる。

しめた!

私はそそくさと、寝室の引き戸を開けて中に入る。
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