冷徹執事様はCEO!?
「で、どうすんだよ。本気か?」

匠ちゃんは謎の『二子玉の料理研究家』で観念したようだ。

「明日、燁子を送りがてらおじさんに挨拶してくるよ」

「それは、急展開だな。逆鱗に触れて、融資を断ち切られるんじゃないか」

匠ちゃんは呆れたように肩を竦める。

「だから事前にネゴっておいてくれ。得意だろ、そうゆうの」

「断る」匠ちゃんはキッパリ言い放った。

「匠ちゃん、私からもお願い」私は潤々した目で匠ちゃんをジッと見つめる。

「断れば燁子がまた家出するぞ」田中は一言余計だ。

匠ちゃんメチャクチャ渋い表情で「わかった」とだけ一言呟いた。

「ありがとう。匠ちゃん大好き!」私は匠ちゃんにぴょんと飛びつく。

「まったくお前は」匠ちゃんは肩で溜息をつくと、私の頭をワシャっと撫でた。

「その代わり、大事にしないと殺すぞ?稜」

「解ってますよ。お兄様」

匠ちゃんは露骨に顔をしかめて、ものすっごい嫌そうな顔をする。

「匠をお兄様と呼ぶ日が来るとは実に感慨深いな」

田中はニッコリと花のように微笑んだ。

人に嫌がらせをする時の田中はやっぱり輝いている。
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