冷徹執事様はCEO!?
中に入ると稜は玄関ホールを見渡す。

「この間久しぶりに来た時も思ったったが、なかなか綺麗にしてるじゃないか」

「ありがとうございます」ユウキは嬉しそうにはにかむ。

「田中さんの薔薇のお手入れも素晴らしかったです。夏のこまめな水やりと剪定のおかげで、今年は長く楽しめました」

「ほお、なかなか話が解るようだな、江藤くん」稜はニヤリと笑みを浮かべる。多分嬉しいのだろう。

「旦那様がお待ちですよ」ユウキに案内されてリビングへ向かう。

稜を見上げると、大丈夫、と言うようにコックリ頷いた。

深呼吸してリビングのドアを開ける。

「た、ただいまー!」

私は処世術である天然のフリで陽気に挨拶し中へ入っていく。

リビングにはパパとママ、そして匠ちゃんがソファーに座っていた。

三人の視線が一斉に突き刺さる。

「燁ちゃん!どこ行ってたの!遥さんと2人で大変だったのよ!」

ママは立ち上がると、眉毛を吊り上げてプリプリ怒っている。

「ごめんねー」私はてへっと笑った。

申し訳ありませんでした、と言って隣に並んだ稜も頭を下げる。

「まあ、掛けなさい」

パパに促され、向かいの二人がけソファーに腰を下ろす。

「話があるそうだな」

パパが膝に肘をおき、手を組むと、真っ直ぐに此方を見据える。ビシっと部屋に緊張が走った。

オフィシャルで見せるであろうその貫禄に私はたじろいでしまう。

「色々と、お忙しい時にお嬢さんを連れ出してしまい、申し訳ありませんでした」稜は頭を下げた。

「燁子が田中くんとまだ親しくさせてもらってるとは知らなかったから驚いたよ。君には他に恋人がいるという話しを聞いたものだから」

パパはニッコリと含みのある笑みを浮かべた。

が、目は全然笑ってない。
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