冷徹執事様はCEO!?
「それよりも、弟よ、まだ気になる女性に手を出せないでいるそうだな」

稜の不躾な発言に、航生はさっきよりも更に眉根を寄せてすっごく嫌そうな顔をする。

「でもな、俺は思うんだよ」しかし、稜は一向に気にすることなく続ける。

「もし想いを告げた後に相性が合わなかったら、悲惨な結末を迎えると思わないか?」

稜の明け透けな発言に、今度は私が眉根を寄せた。

「それはどうでしょうか。その後のお互いの努力次第だと思いますけど」航生は無難に切り返す。

「努力で解決出来る問題じゃないと、弟ならとっくに解っているだろう。どうにかなるのは最初のフレッシュなうちだけだ」

航生はパッチリとした目を瞬かせる。

「もー、やめてよー。航生が引いちゃってるじゃない。」

「そんな訳で弟よ、悩む前に行動に移せ。そうすれば自ずと結論は出るだろう」

悟ったような口調だが最低なアドバイスだ。

「そうですね、お義兄さん。早速行動に移してみようかと思います」

が、しかし、航生は尼寺へ相談に訪れた後の女性信者のように、晴れ晴れとした表情を浮かべている。

何だかよくわからないが、稜は航生の心を捉えたらしい。



「さあ、皆さん、食事の用意が整ったわよ!ダイニングへ移動してちょうだい」

ママがテキパキとその場を仕切る。
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