冷徹執事様はCEO!?
朝食後、持ってきた数少ない荷物を整理すると、さしてやることもなくなった。

「…ヒマ」私はクイーンサイズのベッドにゴロりと横たわる。

庭からシャワシャワと涼しげな水音が聞こえてきた。

むくりとベットから起き上がると、バルコニーに出て、外の様子を眺める。

半袖のシャツに着替えた田中が植木に水をあげていた。

「いいもんめっけ」

私は暇つぶしに丁度よい玩具を見つけ、ニヤリと口元を綻ばせた。

クローゼットからつばの広い真っ白なキャペリンハットを取り出す。

昔買ったものなので、今着ているTシャツ短パンには全く似合わいが、どうせ家にいるのだから構わない。

玄関から出てハットを被ると裏庭へと回る。

水やりをしてる田中の背後にそろりと近づいて行った。

「わ!!!」

田中はビクリと痙攣し、その拍子に手に持っていたホースをあらぬ方向に放水した。

「ギャっ!」

私の顔面に勢いよく水がかかる。

「燁子様、これは失礼しました」

「絶対ワザとだろ!」

私はびしょ濡れになった顔面を手のひらで拭う。
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