冷徹執事様はCEO!?
「いやあ、急に大声を出されたので驚きました」

全然驚いていない冷静な口調で言う。

やっぱりムカつく。

「まあ、丁度良かったわ。暑かったから」

陽射しも強いしこの分だとすぐ乾くだろう。

よく見ると田中はだっさいベージュのチューリップハットを被っていた。
何だ、それ…。

裏地がちらりと覗いているが、古代エジプトの象形文字の柄である。

なまじ見栄えがいいだけに帽子がやたらと浮いて見える。

「田中、随分カッコイイ帽子被ってんのね」

「旦那様からエジプト土産でいただきました」

だから象形文字だったのか。

「燁子様も真っ白い帽子は、素敵ですね」

服は、素敵じゃないようだ。

「これしかなかったのよ」

「それで、何かご用でしたか」シャワシャワと水やりをしながら田中が尋ねる。

私はその横にしゃがみ込んだ。

「退屈なんですもの。ねえ、田中、お相手してくださる?」

私は甘えた口調で言うと上目遣いでジッと田中を見つめた。

「畏まりました」

田中は抑揚のない口調で応えた。
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