冷徹執事様はCEO!?
「ちょっと!なんで傷口にグリグリ押し付けるのよ!」

「そうしないとちゃんと消毒が出来ませんので」

私はソファーに座ったまま、向かいあっている田中の膝の上から足を降ろそうとするが足首をがっちり掴まれている。

「優しくするって言ったじゃない!嘘つき!」

「優しくしているつもりです」

「もういい、自分でやる!」

消毒セットを奪い取ろうとするが田中はひらりとかわす。

「きちんと消毒出来ないので駄目です。反対」

私は渋々反対側の足を田中の膝に乗っける。

ほっそりした美しい指先が足首に添えられると不本意ながらドキドキしてしまう。

田中が容赦なく再び消毒液のついたガーゼを傷口にあてるもんだから、私は尻尾を踏まれたどら猫のような悲鳴をあげた。


「申し訳ありませんでした」

消毒が終わると田中は救急セットに薬をしまいこんで行く。

「お相手するはずが、お手伝いさせてしまい、その上怪我まで」

「身体動かしてた方が気が紛れるから。それに転んだのは自分だし」

「まあ、それはそうですが」

そこは嘘でも否定しろよ、田中。

私は心の中で突っ込む。
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