冷徹執事様はCEO!?
「あ!危ないじゃない!」

「申し訳ございません」

相変わらず心が全くこもっていないお詫びだ。

ワーゲンゴルフはスピードを落とすことなくクネクネした山路を下っていく。

急カーブでブレーキ音を響かせながらスピンすると、その度に私は絶叫した。

「あんた?!正気?!死ぬ気なら一人で死んでよ!」

「申し訳ございません。一刻も早くこのミュージックから解放されたいため、気が焦ってしまい」

と、言いながら、田中はアクセスを更に踏みしめた。

緑の長閑な林道を赤いワーゲンゴルフがレゲエを爆音を鳴らしながら、あり得ない速度で疾走していった。

スーパーに到着する頃には恐怖と車酔いで私はグッタリしてしまった。

「燁子様、スーパーへ到着致しました」

「解ってるわよ」

「体調が悪いようでしたら、車内でお待ちになりますか?」

「行くわよ…」

私は顔を顰めて、老人のようなヨボヨボとした足取りで車から降りた。
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