冷徹執事様はCEO!?
「じゃあ、マンゴーアイス一口ちょーだい」

「………」

きっと嫌なのだろう。田中は黙り込む。

「ねえ、ちょうだいよ、アイス」

「… では一口」

田中はスプーンの先にちびりとアイスを乗っけてを寄こす。

「なによ!猫にあげるんじゃないんだから!貸しなさいよ」

私はスプーンを田中から奪い、人間サイズよりもちょっと多めに掬うとペロリと一口で食べる。

「あら、美味しい」

田中は神経質そうに人差し指で眼鏡をあげる。

「雇用主による不当な搾取を受けました。これは従業員の意思を無視した権利の侵害です」

「おい、さっきと言ってること真逆だな?」

思わず声に出して突っ込む。

そのあと、買い物に行っても田中はマンゴーアイスの事をしつこくネチネチ言ってきた。

ハーゲンダッツのクリスピーキャラメルを買ってやるとようやく抗議が収まった。

田中の食べもに対する執着はハンパない、と私は心に刻んだのだった。
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