冷徹執事様はCEO!?
「実家でしょぼくれた夏休みを過ごすかと思ってたけど、貴方のおかげで思いの外楽しいわ」

「それは光栄です」田中は全くもって光栄さを感じさせずに言う

「最初は見てくれだけのお人形さんかと思ったけど、案外骨もあるようだしね」

寧ろ図々しいくらい。

「ありがとうございます」

私は労い、田中のグラスにお酌する。

「燁子様は、いつまで此方へいらっしゃるのでしょうか」

やっぱり、この手の質問は避けられないか。

葛城家を管理している田中には、きちんと知らせるのは当然の事だろう。

田中も踏み込んだ質問なので伺うタイミングを図っていたのに違いない。

「私、離婚したんだ」

あまり重いトーンにならないよう、さりげなさを装って告げる。

「それは、大変でしたね」

相変わらずの無表情で田中は言う。

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