冷徹執事様はCEO!?
「それが案外あっさりしたもんだったわ」

私はため息をついてビールをグビリと煽る。

「子どもがいれば親権とかで揉めたりするけど、うちはいなかったかったし、実家がコレだけお金持ってると慰謝料もらうのも気が引けるから断ったの」

「では暫くこちらへ?」

「そうね。落ち着いたら会社の近くに部屋を借りるつもりだけど、それまでは厄介になろうかと思ってる」

「ご両親にはまだ話されてないですね」

「国際電話じゃ言いづらくて」

痛いところをつかれ、私はトーンダウンする。

「ではご兄弟には?」

「…言ってない」

バツの悪さに口ごもり、視線をそらした。

田中は口元に手をあてて考え込む。

「私は独身なので、離婚の重大さがイマイチよくわからないのですが、身内くらいには一応お知らせすべきことでは」

「知らせた所で皆忙しいもん。私の兄弟の事は知ってるでしょ」

「存じてます」と言って田中はこっくり頷く。
< 42 / 277 >

この作品をシェア

pagetop