冷徹執事様はCEO!?
「親の反対を押し切って駆け落ち同然で結婚した時は愚かだと思ったわあ」

真巳は小さくため息を着いた。

「狭いマンションを借りて、それでも信夫さんがだけの収入じゃたりないからって働きに出たの。稼いだお金も生活費以外はぜーんぶ信夫に渡して。家事と仕事に追われ、いつも自分の事は後回し」

真巳はシャンパンを一口飲む。

「頑張ってた。すごく頑張ってた。燁子を見ていると、愛する人の為ならここまで変われるのかなあって思ったわ」

「真巳…」

いつもは憎まれ口ばかり叩いていた真巳がそんな風に思っていてくれてたなんて、何だか胸が熱くなる。

「それなのに、あの男は」真巳は額に手を当てて俯いた。

「藤原、確か水原って弁護士だよな」田中がぼそりと呟く。

「でもあいつは法人専門だからなー」

「でも民事の知り合いも一人くらいいるだろ」

「ちょっと聞いてみっか」

藤原はスマホを取り出しポチポチと何やらメールを打っている。

「ちょっと田中、私は慰謝料はいらないわよ?!」

「お金の問題じゃありません。燁子さま、殺人犯が子供が産まれる、と言って恩赦になりますか?」

「其れとこれとは…」

「懐隠は罪です。罰を受けるのは当然のことです」

田中の口調は揺るぎない。

「でも私は慰謝料を取るつもりはない」

私は毅然と言い放った。

「強情っぱり」ボソリと田中は呟く。

「何ですって?!」

私は眉を吊り上げた。
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