冷徹執事様はCEO!?
「な、なにごと?法事でもあった?」

「燁子はどうしてここにいるのよ」

「ちょっと夏休みで…」

私はヘラヘラと笑って誤魔化した。

晴子姉さんの丸っこくて黒い瞳が心配そうに私の顔をじっと見つめる。

私は田中にチラリと視線をむけると、無言でこっくり頷いた。

どうやら田中が兄弟に連絡したようだ。

みんな、知ってるって訳ね。

もう、ここまで来たら隠し通すことは出来ない。

「私信夫と、離婚したんだ。それで実家に戻ってきた」

きっと、兄弟達には呆れられて責められるだろう。『だから言っただろう』と。

私はギュッと手を握りしめた。

「すみませんでした…」

「どうして謝るの?傷ついたのは燁子なのに」

晴子姉さんは困ったように眉根を寄せた。

「駆け落ち同然で家を出て行って、結局うまくいかず出戻って兄弟の顔に泥を塗りました。申し訳ありませんでした」

私は深々と頭を下げる。

しかし、予想していた反応とは裏腹に、匠ちゃんがそっと私の頭を撫でた。

「大変だったな、燁子」

昔っから私の頭を撫でてくれるその手は暖かくて変わらず優しい。

「うん」

私は口を横に結んでこっくり頷く。
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