冷徹執事様はCEO!?
「お父さん、怒ってた?」

晴子姉さんが心配そうな表情で覗き込む。

「好きなだけいろって」

「よかった」

晴子姉さんはホッとしたように微笑んだ。

よかった… お怒りは収まったようだ。私もホッとする。

「皆さん、折角お揃いになったのですからお茶でもいかがですか」

田中が私達に声を掛けた。

「そうねえ、いただきましょうか」

晴子姉さんはいつもの穏やかな笑みを浮かべた。


兄妹が久しぶりにダイニングルームに揃う。

田中がコーヒーと紅茶にスコーンやサンドウィッチなどの軽食を手早く準備してくれた。

「で、離婚の原因は何?」

航生がお坊っちゃまらしい優雅な所作でコクリとお紅茶を一口飲む。

「性格の不一致…的な?」

苦しい嘘をつく。

「やっぱり価値観の違いで生活が合わなかったのか」

匠ちゃんは顎に手を置き考え込む。

「そおかしら?燁ちゃんは結構逞しくやってたと思うわ」

晴子姉さんは同じ女だけあって鋭い。

「信夫さんの浮気相手に子どもが出来たそうです」

田中は匠ちゃんに紅茶のおかわりを注ぎながらサラリと核爆弾を投下する。

私を除く兄妹3名はピシッと固まった。
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