冷徹執事様はCEO!?
大事な話がある。

夫である信夫に言われて、嫌な予感がした。

こういう話の切り出し方は大抵悪い話だからだ。

キッチンのテーブルに向かい合って座る。

伸夫はテーブルの上に置いて合ったタバコに手を伸ばし火をつけた。

「実は付き合っている彼女がいて、その子に子どもが出来た…」

伸夫は焦点の合っていない目でボソリと呟いた。

「…はい?」

あまりに唐突すぎる話しだったので、思わず聞き返してしまった。

だって伸夫と私は結婚しているのではないか。
既婚者に彼女という単語はそぐわない。
不倫相手と言うべきだ。

「俺も男として責任を取らないといけないと思ってる」

私の心臓は激しく脈打ち胸から飛び出しそうだ。

「離婚してくれないか…燁子」

あまりに衝撃的すぎる展開に頭が真っ白になった。

「すまない…」

伸夫が深々と頭を下げるとくらりと目眩した。

私たちの生活は確かに順風満帆、とまではなかったが、慎ましくもそれなりに上手くやっていたと思う。

当たり前だった日常が脆くも崩れ落ちて行った。

それも突然に。

人間本当にショックを受けると言葉も涙も出ないんだ。

ぼんやりとそんな事をおもった。
< 9 / 277 >

この作品をシェア

pagetop