孤高の貴公子・最高責任者の裏切り
「面倒ですね。そこ、改善してほしいですよね」

「無駄ですよ。修理は何が来るか分かりませんから。時によれば1週間ないこともあるし。毎日あることもあるし。コスト削減のためです」

「なるほど。まずは、一昨日受けた分を出さないといけませんね」

「ハルさんが戻ってこないと当分は片付きませんよ」

「ハルさん……って?」

「センター長です。聞いてないんですか?」

 あからさまに怪訝な顔をされたので、慌てて

「いや、入院していることは聞きましたけど、お名前はまだです……」

「まあ、詳しいことはハルさんに聞いて下さい。僕もう食事の時間なんで」

 って、お客さんカウンターで待ってるんだけど……。

 それを全く気にせずフランソワもデータを入力し続けている。

 受付データを入力するついでに品名なども書いて、空いた時間で梱包してくれれば助かるのに、と思って画面を覗くと、

「シフトはフランソワさんが作ってるんですか……」

 センター長が留守の間は彼女が作ることにしたのだろうが、それでも……。

「なんか、人数多くないですか? 30人? そんなにここ人がいませんよね?」

「ああ、これは2階の日用品売り場のシフトです」

「えっ!?」

 何故全くフロアに立っていないフランソワがそのような事をやっているのか、見当もつかない。

「えっと……1、2階の責任者が棟方サブマネージャーですよね?」

「はい、3階の雑貨と被服が波子(はし)サブマネージャー4、5階の家電が宮土理(みどり)サブマネージャーです」

「ということは、1階のシフトも作ってるんですか?」

「はい。棟方サブマネージャーのご意向です。私だけの特権のような物ですわ。大袈裟な言い方をすれば」

 フランソワはにやりと笑う。

 何、愛人!? なんか、怖いんですけど……。

「あ、えーと、サブマネージャーってもう1人いましたよね?」

「はい、後は倉庫や総務担当の鳴丘(なりおか)サブマネージャーです。それと、最後のお一方は、孤高の貴公子、須藤 芳樹マネージャーですわ」

 こ、ここうの……。

「私、まだマネージャーと一度もお会いしたことないんですけど。どんな方なんですか?」

 何が孤高なかのかは全く何も想像できない。

「自らの目でお確かめになって下さい。女王様は須藤マネージャーに選ばれし者。あの方の酸いも甘いも存分に経験なさるといいですわ」

 って、上目遣いは可愛いんだけど……怖いんですけど。

「あ、そう……ですか……」
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