孤高の貴公子・最高責任者の裏切り
「会議の準備を何故棟方が担当した?」
挨拶よりも前に、長机を中心に全員が対面するように腰かけるなり、須藤は始めた。
「何も訳が分からねー奴に準備させろってのも無理があるでしょ。だから今回は俺が手本を見せただけですよ」
と棟方は伏し目で言い切ったが、言われたお茶は不要と鳴丘にアドバイスされたので、結局テーブルを並べ、後は山瀬にはまだ分からない資料を色々用意した事が手本のようだった。
「今日初めて顔を見る者もいるだろうが、彼女が修理センター長代理の山瀬だ」
山瀬は紹介されるや否や立ち上がって
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「これから彼女にはサブマネージャーの補助としてできるだけのことはしてもらう」
思わず、「えっ」と声を上げそうになった。代理の仕事もやりきれてないのに、サブマネージャーの補助もだなんて……。
「修理センター長代理兼、サブマネージャー補佐だ。名刺にもそう書いておく」
「仕事量が多いのでは?」
インテリメガネの宮土理がメガネを持ち上げながら質問したが、
「行く末は、サブマネージャーは5人体制でいこうと思う。その準備段階が故と、センター長不在が重なったため、仕方ない。無理か?」
須藤は唐突に当本人に聞いた。
「えっ、いえっ!!だっ、大丈夫デス……」
以外に答えはない。
「意義あり」
棟方は堂々と右手を挙げる。
「なら、センター長代理は他の者でもいけるはずです。山瀬と同時に入った和久井は前サブマネージャーですし、使えそうです」
「却下だ」
須藤はさりと即答した。
何故代理に山瀬を抜擢したのかは察する通りだ。説明は必要ない。それと同時に和久井では春野とはコンビになれない」
「…………」
棟方はテーブルのその先を睨みつけた。
「山瀬ができないのなら、降格させるまでだ」
真横で、息苦しくなるようなセリフを吐かれた山瀬は、さすがに身体が固まった。
「今山瀬に望むのは、その両方だ。俺はできると信じている」