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頭は下。足は上。


つまり逆さまの状態になって誰かが落ちていたのだ。


少年の足は、無意識にその落下地点に向けて走り始めていた。


とてつもなく嫌な予感がした。


背筋に寒気が走る。


胸が締めつけられるように苦しかった。


けれどその原因が、“走る”という今のこの行為に関係していないことはわかっていた。


体力測定で走った50m走以来の全力疾走。


もしかすると、そのときよりもまだ速かったかもしれない。


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