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「どうしたの急に。最近話しかけてくれなかったから少し心配したんだよ?」


自分の口から出た何気なく出たこの言葉は、半分が本当で半分が嘘だということは、言っている自分でもわかっていた。


だけど、もしかするとその“わかっていた”という認識自体が嘘だったのかもしれない。今思えば、ほとんどが嘘でできた言葉だったような気さえするのだ。


「あーそう。前まではそう言われると素直に嬉しかったけど、今となってはありがた迷惑だわ」


風になびく長くて黒い横髪を耳にかけながら、私の方を見ることなくミオはそう言い放った。
彼女の権力か何かをより強く感じさせるように、ミオの後ろでは彼女と特によく行動している二人の女子生徒がクスクスと笑っていた。


この状況。俗に言う“いじめ”というやつである。


そういえば、このメンバーに水をかけられたり体育館シューズを隠されたこともあったっけ。典型的な行為だけど、典型的だからこその立派ないじめだ。


今の私の中には、二人の自分がいる。


一人は、そんな風に以前されたことを呑気に思い出す自分。


そしてもう一人は。


違う。こんなのミオじゃない。どこかでそう叫ぶ、まだこの現状を受け入れたくない自分。


ミオはもっと穏やかだった。どこか抜けているような感じの天然な性格でおっとりしていて、成績も上位なのに気取ったところがなくて誰にでも優しくて……。とにかく、私の知るミオはこんなふうに誰かを見下すような発言をする女の子じゃなかった。


ミオの姿を身に纏った別の何かが、そこにいるような感じがした。わけがわからなくて、私は黙っていることしかできなかった。



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