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自分の考えさえももうわからない。これが現実なのかそれとも夢なのか。“ミオ”という姿をした別の生き物なのか、それとも“これ”がミオという人間なのか。
隠していた全部を私が理解できずに混乱すると知っていたかのように、目の前にいる“それ”は愉しそうに笑っている。
「ねえシイナ」ミオが再び口を開いた。
「あたしね、ひとつだけ疑問に思ってたことがあるんだ。何だかわかる?」
そんなの、私にわかるわけがない。
ミオが一歩ずつ、そしてゆっくりと私との距離を縮めてくる。けれど私は動かなかった。それどころじゃなかったのだ。
ミオの豹変ぶりが怖くて、受け入れられなくて、信じたくなくて……。だけど今私の目の前には別人と化したミオしかいなくて、どうすることもできなかったのだ。
以前のミオを信じていたい自分が、どうやらまだ生き残っていたようだった。
ミオがニタリと口を歪ませた。初めて見る、親友のニヒルな笑み。私を嘲笑っているときでさえ見せなかった、冷酷な微笑み。
不気味だった。私の全身を光の速さで寒気が走った。
「――あんたがいなくなったら、どんなに楽なんだろうね?」