Delete



私……生きてる。


“あのとき”私は、確かにミオに屋上から突き落とされた。


宙を舞っていた。


空から見た大きな世界を私は記憶している。


だけど私は今、生きている。


手を動かしても、ちゃんとその感覚はある。


私の手。


私は死んでいないということ……?



だけど怪我なんてどこにもないし、痛いと感じるところもない。


“あのとき”は確かに全身に激しい痛みがあった。でも怪我をしているならば病院にいるはずなのだ。何たって屋上から落下したのだから。


だけど。


怪我もない。病院にもいない。ましてやここは、私の部屋。これが現実ならば、さっきまでの“あの出来事”は全部夢だということになる。


お母さんが開けた窓から差す光はカーテンを貫いて、部屋全体を明るく照らしている。いつも通りの光景。だとすると、やっぱり“あれ”はただの夢……?


< 17 / 331 >

この作品をシェア

pagetop