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「……誰」
聞きたいことは山ほどあった。
初めて会ったくせにどうしてこんなにも馴れ馴れしいのか。目的はわからないけれど、どうして私のもとにやって来たのか、等々。
そして。
この少年は……一体何者なのだろうか。
「落ち着け」表情を変えることなく彼は言った。
「そういうのは後でちゃんと話すから、とりあえず今は俺の話を聞いてくれ」
言いながら彼は部屋の中に入り、後ずさる私の方へ歩み寄る。気がつけば私と彼の距離は目と鼻の先(というのはいささか過言だけれど)。
髪の奥から大きな瞳が私を捉えた。それはとても澄んだ色をしていて、純粋な瞳だった。彼のその赤い瞳に私の姿が映っているのが見えた。
「俺はリック。……シイナ、お前にはやり残したことがある。そうだろ?」さらりと自分の名前を名乗り、彼は私にそう尋ねる。
そうだろ? と聞かれても私は何も言えない。ぶっちゃけ“あの瞬間”のことはよく覚えていないのだ。
それよりも、このリックと名乗るこの謎の少年がどうして私の名前を知っているのかということが一番の疑問だった。