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私は自分の部屋に戻って机に置いていたスマートフォンを手に取り、電話した。
相手はミオだ。
もちろん連絡を取るための電話ではない。
『もしもし?あ、今ニュース見てる?なんかあたしたちの学校で事件が起きたらしいね』
画面の向こう側から聞こえる、ミオの声。
だけど。
「……ねえ。今日の夕方の5時頃、どこかで会えないかな」
ミオの持ちかけてきた話題には一切触れず一方的に話を進めた。
きっとミオは知っている。
気づいているに違いない。
余計なことを言ってしまえば計算外のことが起こりかねない。
『5時?予定はないけど ……。じゃあ学校帰りに別れてるところでいいよね』
「うん。じゃ、夕方ね」
そう言って、電話を切る。
久しぶりのまともな会話。
とても平和的で平凡で、どこにでもあるような会話。
嵐の前の静けさのような気もした。