Delete



「ねえシイナ」


思考の中から後ろの二人を消し、あたしはシイナに言った。


「あたしね、ひとつだけ疑問に思ってたことがあるんだ。なんだかわかる?」


じりじりと、一歩ずつシイナに近づく。


彼女は常にあたしと一定の距離を保っていた。


つまり、彼女は後ずさりしているということである。


あたしは今、どんな顔をしているのだろう。


もう自分さえもわからない。


でもきっと、笑ってるんじゃないかな。


鏡を見れば自分でも恐ろしくなってしまうような、そんな笑みだと思う。


< 273 / 331 >

この作品をシェア

pagetop