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久しぶりの屋上。
いつもは違う二人とご飯を食べているから、そのこともあってほとんど教室にいた。
「気持ちいいね、風」
なるべく平然とした態度でいることを心がけた。
今朝抱いた違和感はいつになっても拭えないままでいた。
“あたしは死ぬ”
もしその原因がシイナだったとしたら――
「特に今日の風は特別な気がする。きっとシイナが一緒だからだね」
なんて思ってもみないことを言ってみる。
あたしは昔から臆病な性格だ。
だから特に今は、「シイナさ、あたしを殺そうとしてたりする?」なんてことをさらっと聞く勇気なんてない。
そこで「うん」なんて言われてしまっては、もうその時点であたしの負けだ。
それにまだ違和感を覚えたというだけで、確信しているわけではない。
シイナは笑顔を崩すことなく黙っていた。
何を考えているのかもわからないこの空気。
その空気を引き裂くように声を出したのは、シイナだった。
「……こんな風、久しぶり」
今朝見たシイナとは違う彼女が、そこにはいた。
厳密に言えば、そこにいたのは“いつも通り”のシイナだった。
――確かに、久しぶり。
柄にもなく、そんなことを思うあたし。
あたし自身も、きっと落ち着いていたのだと思う。
結局あの違和感が消えることはなかったけれど、今朝のような寒気を感じることもなかった。