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「おはようシイナ」
シイナが教室に入る寸前のところで、あたしはシイナに声をかけた。
「ミオおはよ」
振り向いたときの彼女は、何かに少し怯えているようにも見えたけれど、それは一瞬で、すぐにいつもの彼女に戻った。
あたしも、いつも通りの“作り笑顔”で接した。
シイナはあたしから何かを探ろうとしているようだけれど、そんなことはさせない。
お互いに消してしまいたい存在が目の前にいるのに、簡単に探られちゃ面白みがなさすぎる。
あたしがそんな風に必死なように、きっとシイナも頑張っているんだと思う。
「ねえミオ」
「ん?」
あたしは笑顔を崩さなかった。
あたし自身ポーカーフェイスが上手だった自信はないけれど、少なくともシイナよりは隠せる自信がある。
いつも通りの“あたし”を保つことができれば、きっとシイナの計画が先に狂うはず。
少し、シイナの呼吸が乱れているように感じた。
何かに焦っているのか、それともまた別に原因があるのか。
それはあたしにはわからないけれど、正常でないのは確かだった。