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そろそろシイナが何か仕掛けてくる頃だろうと思っていたが、何もなく放課後がやってきた。


「…ねえシイナ」


授業が終わって、彼女の教室に行く。


自分でも驚くほど、その軌道は一直線だった。


頬杖をついて窓の外を見ていたシイナ。


振り向いたと同時に、あたしと眼が合う。


昨日とは違う、夕日に照らされるまっすぐな瞳。


「昨日はごめんね。なんか、余計なこと言っちゃったみたいで」


あたしがそう言うと、彼女は少し黙っていた。


「大丈夫。こっちこそ大声出しちゃってごめん」


しばらくして、笑顔とともにそう返すシイナ。


…そんなことしなくても、知ってるよ。


「今日さ、一緒に帰ろ?」


にっこりと笑って、彼女に言った。


するとほんの一瞬、目を逸らした。


その嫌そうな顔。


めんどくさいとでも思っているのだろう。


「……わかった」


渋々ではあったが、彼女は頷いた。


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