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この日のあたしたちのクラスの一限目はコミュニケーション英語だった。


科目の名前が比較的長いため、あたしを含めた生徒たちは“コミュ英”と呼んでいる。


「明日はUnit8のPart3に進むから、ちゃんと予習しとくんだぞー」


常に明るい表情で毎日を過ごしているコミュ英の女性教師の声が、あたしたちの教室に響く。


「あ、そういえば質問とかない?なかったら先生はもう退散するけど」


先生の言葉に反応する者はいない。


しかしそれもいつものこと。


誰も先生のところに行かない。


つまりそれは、本日の授業に関する質問事項がないということを顕著に表している。


そんな状況に先生は少し安心したような顔で、一人で頷いた。


「うん、今日も大丈夫みたいだな。予習や復習をしててわかんなかったらいつでもおいで。じゃ、退散するとしますわ」


…相変わらずな人。


こんな平凡が続くのは、いつまでなのだろう。


こんな平凡が壊れてしまうのは、いつなのだろう。


こんな平凡を壊してしまうのは、いつなのだろう。


あたしが考えるその“時”が来るのは、思いの外早くて、そして突然だった。


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