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キーンコーンカーンコーン。
二限目開始のチャイムが鳴る。
だが。
それが鳴り終わった後でも、あたしたちのクラスはざわついていた。
先生が、来ないのだ。
いつもなら数学の先生は授業開始の二分前には教室に入ってきている。
でも、いないのだ。
五分待っても二十分待っても、数学の先生は来ない。
「…先生、来ないね」
「先生から何か聞いてる?」
「いや俺は知らんけど…」
「呼んでこようか?」
「じゃあ俺、代表委員だし行くよ」
「任せたー」
「じゃあ代表委員以外は、みんなここで自習ね」
男子代表委員が教室を出ると同時に、あんなにも騒がしかった教室が急に静まり返った。
……………………。
知らない。
あたしは、知らない。
…いや落ち着け。まだ決まったわけじゃない。
休んでいるだけっていう可能性だって十分あるのだから、決めつけるのはまだ早い。
…何もない。
違和感のなかったあの時間は、きっとあたしの気のせいに違いない。
大丈夫。
あたしは何も知らない。
何があったとしても、あたしは知らないと言っておけばいいんだ。
あたしだって、バカじゃない。
今は違和感や危機感だらけじゃん。
これが“普通”なんだ。
一限目までの時間が“異常”だっただけ。
先生が来ない。
この事態に関わっている人間がいるとするならば、それは間違いなく――。
シイナだ。