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三限目からは、何の変哲もない時間が流れるばかりだった。
三限目終了のチャイムが鳴る。それと同時に、
「もし数学の先生が来たら、僕が代わりに記入しておいたってことを誰でもいいから伝えておいてくれ。頼んだよ。じゃ、僕はこれで」
現代文教師はそう言って、足早にこの教室を去っていった。
たぶん、彼の頼みは実行されないだろう。
平凡すぎる時間がそう言っている。
もちろんあの数学教師がここに来ることもないはず。
思わず、太ももの上の両手をぎゅっと握りしめる。
制服のスカートもそれに巻き込まれたらしく、しわくちゃになる。
まだ実感はないけれど、少しずつ、そして確実に、あたしの死は近づいている。
今日かもしれない。明日かもしれない。
もしかしたら、今この瞬間かもしれない。
怖いわけじゃない。
え?強がりだって?バカなこと言わないで。
“シイナに殺される”ことがわかってどれくらいの時間が経ってると思ってんの。
覚悟はできているし、そもそも早々に殺されるつもりなんて一ミリもないから。
まぁ覚悟してるってことは、殺されるってもう認めているってことなんだろうけれど。
…自分でも、よくわかんない。
シイナに何ができるっていうの、なんて思っていたけれど、今のあの子なら何だってできそうだし。
何だって殺ってしまいそうだし。
あの十分間で何が起こったのかなんてあたしにはわからないけれど、何かが起こったのは事実。
歯車だけじゃない。
シイナも、歯車もろとも狂いだした。