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とりあえず平常心だ。
あたしの心境を察知されるようなことがあってはならない。
受話器のマークをスライドさせ、いよいよあたしは電話に出た。
「もしもし?あ、今ニュース見てる?なんかあたしたちの学校で事件が起きたらしいね」
…あたしは、何も知らない。
その振りをするのは、電話の向こう側にいる彼女と仲の良い振りをするよりも苦痛だった。
『……ねえ。今日の夕方の五時頃、どこかで会えないかな』
あたしの持ち掛けた話題は、完全に無視された。
「五時?予定はないけど…」
それでもこうやってイラつかずに答えてあげているのだから、あたしは相当なお人好しだと思う。
「じゃあ学校帰りに別れてるとこでいいよね」
そのうえ場所まで指定しているのだから、もうそれはかなりのものだ。
――でもまあ、ミオはお人好しだからねー。
――えーなにそれ。お人好しとかただのバカじゃん。嫌だよ、あたしそんなの。
いつだったか、殺されたあの二人とそんな会話をしたこともあったっけ。
それならあたし、重症じゃん。
バカは治らないなんて話は本当にバカバカしいばかりだと思っていたけれど、それは自分のことだったのだと、今はそう感じる。
シイナから電話がかかってきたあの瞬間。
――もう終わるんだ。
そう思った。
あたしはそうわかって、自分で死に場所を決めた。
殺されるなら、という思いがどこかにあったのかもしれない。
…結局、バカは治らなかったなぁ。