恋日和〜春〜
「今、父さんと母さんは先生のとこ。」
「あ、涼くん。来てくれたんだ」
「お久しぶりです」
「音和、涼くん来たよ?」
眠る音に話しかける和さん。
その時、音の指がピクリと動いた。
和さんが音の手を握ると、ゆっくりと目を覚ました。
「……音和っ!分かる?私!」
「……和….ちゃ……」
「音和」
「はる……くん」
悠都さんは音の名前を呼ぶと、ナースコールを押した。
「……りょ….?」
「あぁ」
音は俺を呼んで、点滴の刺さっていない左手を伸ばした。
俺はそんな音の手を握る。
音の手は冷たい。悠都さんが先日言っていたのを思い出す。いつも冷たいんだとか……