恋日和〜春〜





「悠くん、紅葉通りって?」
「教室のある校舎から図書室まで、最短で来れる道。だけどそこは“カラス”がたくさんいるんだ。」
“カラス”とはナンパ癖のある男のこと。それが紅葉通りにはうじゃうじゃいる。
音は“紅葉”という名前に惹かれ、必ず紅葉通りを通るだろう。昔から自然が大好きだった。それは今も変わらないと見た。

「そうなの…?紅葉って付くから通ってみたいなって思ったのだけど…」
「カラスは苦手だろ?避けきれないくらいいるんだ。通らないことをすすめるよ。」


ーー「コレをやればいいですか?」
「そうそう。涼ならすぐに終わると思うんだ。」
俺は花村さんに渡された仕事を黙々と始める。

「ーー音和、なんで俺と涼が知り合いなのか知りたいか?」
しばらくすると、花村さんが口を開いた。
「…もちろん。」
そう答える彼女は興味津々だ。
「んー…そうだな…簡単に言えば俺の彼女の弟。で、結構前に 機械関係のバイトしてるって言っただろ?その会社、涼の祖父にあたる人が経営している高瀬グループのホールディングスで圭人先生の弟さんが主権を握ってて、そっから声かけられて……それでまぁ、いろいろあって涼も一緒にやってるんだ。おまけで説明すると涼のお父さんは高瀬病院の先生だよ。」
“幼馴染み”ってところは綺麗に省いて説明する。
「そうだったのね……って!悠くん、彼女いたの⁉︎」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「言ってないよ。今度お会いしたい!」
「多分会えるよ。来月からここの校医になるから。」
「そうなの⁉︎ということは、莉音先生⁉︎」
そう。俺の姉(莉音)は花村さんと付き合っている。



< 74 / 209 >

この作品をシェア

pagetop