届かなくても、

逃避

翌朝になっても視線は相変わらず続く。



昨日よりは減ってきているけれど、



刺すような視線の痛みは変わらなかった。



彼はベトベトと貼りつく何かを払うように



ニヤニヤしてた人達を鼻で笑っていたけど、



私はそんなにすごい人じゃない。




不意に修也の顔が浮かぶ。



姫が修也のことを好きなの、知ってるのに



何か言われても堂々としてた。



なんで、あんな風にいられるんだろう。




私は地味に、人の視線を浴びるのが



すごく苦手だから



あんな堂々としてられるのは、ある意味憧れる。




元々修也は、音楽的な意味ですごい尊敬してた。



あんなに露骨に言われてもじっと耐えるってすごい。




私は、無理。




いつか、急に、『キレて』しまう時が来る。



その自然な『キレ』を待つ。



そういう時の方が、弱い自分を隠して威嚇できるから。



でも、修也は威嚇しない。



機嫌が悪い時はあるけど、それ以外は



あんまり口に出さないし。




単に喋らないだけだと思うけど。




威嚇って弱い生き物がするものなのかな?
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