届かなくても、
そのひつじが全部外されていて


パンダが一つ存在感を放っていた。



夢叶はいつもチューナーをポケットに入れている。



チューナーについたそのパンダは鈴がついているらしく



動くたびに、しゃんしゃんと小さく音が鳴っている。



まるで、飼い猫みたいだ。






「きーさん怒った?」



「…え?いやいや、怒ってない」



「今無視してたでしょ」



「あ、ごめん」





夢叶をぼーっと目で追いかけていたせいで



彼の話を聞きそびれていたようだ。





「だから、今日帰り歩きでしょ?




二人で帰ろう、って」




「歩くのなんで知ってるの?」




「きーさんが言ってたよ」





『二人で』が強調されたことに不審に思った。




しかし、彼と帰るのは好都合。




私は素直に頷いた。
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