届かなくても、
寒空の下、私は早足で歩く。



いつしか私と同じ背丈になった彼は



今日はもう隣を歩かない。



そう考えただけで涙が出た。



馬鹿みたい。ホント。



あんな言葉に踊らされて。



怒りより、苦しみの方が今は強い。



もう、こればかりはどうしようもなかった。



昇降口を走るときに涙が零れてしまった。



勘がいい修也には絶対バレた。



姫も多分気づいてる。



涼と夢叶はこのこと知らないけど、



きっと姫が話しちゃうだろうな。



絶え間なく零れ落ちる涙を拭いながら



急傾斜の下り坂を下る。



コートの毛に涙は染みて


そこばかり冷たくなる。



心は彼に縛り付けられたまま。
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