届かなくても、
ハンカチを取り出すのも億劫で、



手の甲で涙を拭う。



捨てきれない、彼への想い。



中途半端なまま、終わってしまう恋。



梶山くんが言ってた『責任』。




とれなかったな、結局。




人は悲しくなった時、空に慰めてもらう。



私は遥か上空を見上げた。




灰色の雲がぼんやりと浮き上がり、




満点の星たちが目に映る。




目のレンズは涙で潤んでその星たちさえ



映してくれない。




今日は今年一番の寒さだと




天気予報で言っていた。





足の指先は氷のように冷たく



顔には寒い風が吹き付ける。




氷が当たっているみたいで痛い。






「…っごめんなさい…



うっ…ひっくっ…」





初めて、誰を想って泣いた涙だった。
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