届かなくても、
その日の部活、姫が目をギラギラさせていた。
恐ろしい殺気を体中から発し、
話しかけたら殺されそうな雰囲気が漂っている。
そんな様子が気になり、近くの後輩に話しかける。
「姫、何かあったの?」
「クラスで嫌な事があったらしいです」
後輩は楽器を持って、のんびり歩いて行った。
ちなみに男子である。
ちなみに、部内で一番可愛い男子だと思う。
本当、純粋に。
後輩が口にした言葉を疑問に思う。
嫌な事?
彼女とはクラスが一緒だが
そんなことは
あぁ、あったあった。
説明しよう。
姫の絶賛片思い中(?)のお相手は
もう一人の気さくな学指揮、修也である。
ユーモアがあり、音楽的センスが私よりあるのに
何故か自分を謙遜する。
もっと胸張ってればいいのに
とは思うが、そこがまた修也の良い所なのだろう。
だが何故か、修也に対する周囲の好みは
人によって本当に様々である。
その彼が、他クラスの女子に呼び出され告白されたのだ。
(無論、彼は即答、振ったらしいが)
機嫌がすこぶる悪くなるのは予想ができる。
仮面は結構サボり魔の為まだ来ていない。
遅れていくのである。
あんな女くたばってしまえばいいとは思っているが。
そして姫はしかめっ面のまま返事をし、
その顔のままで自分たちの使う教室へと向かった。
あの告白した女子
姫に恨まれるなぁ~。
のんびりとそんな思いを全身に巡らせながら
私は楽器を持ち、教室を出ていった。