届かなくても、

クラスメイト

過疎化がかなり進み、クラスも2クラスだけのこの中学校。


彼とは小学校の頃から名前だけは知っていた。



別に有名人っていうわけじゃないけど。



小学校に上がったばかりの1、2年生の頃にクラスは同じだったけど、特に交遊は持たなかった。


中学に上がり、初めての席替え時に隣になったのが彼だ。




穂波蛍。



彼は人柄が良く、


誰にでも好まれるような人間だが、そんな彼も小学6年生の頃、卑劣ないじめを受けていたと本人から聞いたことがある。



私も小学2年生から3年間にあたりいじめられていたが直接的なものではなく、無視され省かれるという普通のモノだった。



それ以来周囲に興味を無くし、感情を表に出すことなく、友達と争いもせず、



ただ勉強と音楽、それと、読書にのめり込んで生きていた。


彼は6年生の頃は読書少年、今とは考えられない程口数は少なく、クラスの一際派手な男子グループに机の中にごみを入れられていたりしていたらしい。



今の彼の性格はその頃から成り立っていたんだと思うと、


何故だか彼が可愛く思える。


とまぁ、彼の詮索は置いておこう。


それにしたって喋る程度の仲の彼と私は、明らかに恋の段階を踏み外しているような気がする。



1年生の時の話だ。


中学校に入ると団結力とやらを高めるために、合唱コンクールという音符も読めない素人に歌を歌わせる行事を行うのだが、私はピアノ伴奏者、彼はクラスメイトにノリで指揮者を推され指揮者となった。




指揮者と伴奏者は息を合わせて音楽を作らなければならない。



その為、よく目を合わせる。



彼は時々音楽の時間、目を合わせると赤くなっていたが元々コミュニケーションをとるのが苦手な彼だ、目を合わせるのも慣れていないのだろう。



その時の私は恋愛感情を持っていなかったために気にも留めなかったが今思えば彼もその時少しくらいそういう感情を持っていたのではないかと思う。
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