届かなくても、
問題発生危機一髪
「…ない」
教室を移動し、楽器を出そうと思ったその時だった。
「あれ」がないことに気づいたのは。
アンサンブルコンテストと言って
楽器の種類ごとに2人以上で出場するものなのだが
私の学校はたったの3チームしか出られない。
私以外の子が足を引っ張ったせいで呆気なく落ちた私は
他のパートの私の同級生がコンテストに出て
1年生が出られないところの1年生を引き取っている。
その後輩たちは全員で7人。
どの子も個性がある、面白い子たちだ。
「リードがねぇ…」
私は木管楽器だ。
リードというのはマウスピースという
口を当てるところにつける小さな木なのだが
何故かそれがなかった。
思い出せば、あれだけ置いてきたのを思い出す。
「うっわ~…」
まずい。緊急事態だ。
今更早退なんて出来ないし…
「あ」
一つ手があったじゃないか。
にやりと微笑む私に冷たい風が吹き付けた。