届かなくても、
しばらく教室の隅っこに体育座りで座っていると
どたどたと足音がした。
その足音の正体は
「蛍先輩!!蛍先輩!!」
「きーさん先輩いませんか!?」
「教室がもぬけの殻なんです!!」
「きーさん先輩見かけませんでしたか??」
口々に話し出す後輩たち。
皆で合わせてればいいのに、とは思うが
口に出すと居場所が割れるのであえて黙る。
すると彼は
「俺見てないよ。
いなくなるのいつもだし自由人だから
そのうち勝手に戻ってくると思うよ。」
かくまってくれた。
そうですか…と
途端に残念モードになる後輩たちであった。
ありがとうございましたとだけ言って帰っていった。
しかし、ただ一人残る人物がいた。
私の思う男子の中で一番可愛い後輩、
梶山京太(カジヤマキョウタ)だけがその場に残っていた。
「先輩、忘れ物したからとはいえ
ほっぽり出さないでください。」
彼は梶山くんが私がいることに気づいたことを
まだ気づいていない。
その言葉が私に向けられたものだとしると
思わず体がビクッとなった。
可愛いは無自覚、やるときはやる子。
何で私の部活はこういうのが多いんだ!!
と大声で叫びたい。
「きーさん先輩。一つ言いますね。先輩の状態
『頭隠して上履き隠さず』です。それじゃ」
彼はそれだけ残して去って行った。
自分の状態を見て納得した。
教卓に胴体は隠れている。しかし、
下の僅かなスペースのせいで
上履きが丸見えではないか。
「…面白いね、梶山君」
「変な時ばっか勘がいいのは蛍と全く一緒」
思わず言い返してやると
彼は
「でも、無自覚の可愛い子と一緒にされるのは嫌だな」
私の頭の中を読んだように嗤った。