届かなくても、

終わりとはじまり

部長が出席を採ってる途中に彼は来た。




そろーっと入って

そのまま自分の席へとたどり着く。




「穂波蛍くん」





「はいっ!!」





「遅れる時は言ってください」





「あっはい…」







くすくすと周りがざわめいたが


部長が点呼を始めると静まる。



点呼が終わりミーティングが終わると思った。





しかし部長が前置きをして話し始めた。





「今日、新入部員がいます。





転校生で、2年生は多分知ってるだろうけど





前の学校で吹奏楽をやっていて





うちの学校でも是非!!ってことで





入ってもらいました。






松川麗亜さんです。入って下さい」







最悪のストーリーだった。





扉からニコニコして入ってきたのは




『レイア』ちゃんだった。





部長に勧められおずおずと指揮台に上がった彼女は





自己紹介をする。





「先程部長さんから紹介があった松川麗亜です。




前はフルートを担当していました。





足らない部分はあるとは思いますが





よろしくお願いします。」







ぺこっと麗亜がお辞儀をすると




拍手が起こる。





仮面を除いたほとんどの部員は




麗亜を歓迎した。





麗亜はフルートを担当するらしい。





彼女の指が細やかに動く。






言われてみればあの二人はお似合いだと思う。





自分の入る隙なんて見つけてもいないけど






入る所自体なかったんだと気づかされた。






「きーさん、指揮よろしく」






部長に一声掛けられ


私は彼女が乗ったあの指揮台へと上がる。




別にぶりっ子している訳ではないけど



高い所が苦手で前は指揮台から見下ろす景色がすごく怖かった。



今は全然そんなことない。





これが慣れというやつなんだ。





「B♭(ベー)お願いします」




「はい!!」





1、2、3、4、と指揮を振る。






合わせて音が出る。





不協和音だった。






いつも合わないのはトロンボーンかホルンだから



とその2パートを見る。



鼻の奥がびりっと痛くなった。




あ、泣くなこれ。





「ごめん。修也、後よろしく」




「え、なんで…」





修也の返答を待たず小走りで音楽室を出ていく。




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