届かなくても、
とうとう今年度の部活も終わり
お見舞いに行ってやろうか__なんて考えてる。
私一人で行くのは嫌だなぁ…と思い
(暇そうな)夢叶を誘う。すると
「男子連れて行こう。
蛍が逆ハーレムになっちゃう」
と笑って言いちょうどその辺にいた修也と、
チューバ奏者の及原涼(オイハラリョウ)について来てもらった。
及原は後輩にもそこそこウケのよい人だ。
外も中身も太っ腹。穏やかな笑い方。
悪く言うと、印象に残りづらい。
全然悪党じゃないけど。
そのメンバーで病院に行く。
受付の人に場所を聞いて病室へと向かう。
手土産にミルクティーと
限定発売のお菓子を持って。
彼の病室は個室だった。
「蛍ってVIP?」
私が聞くと
「人といるのが嫌だとか言って
個室にしてもらったんじゃん?」
と修也。
「金持ちかよw」
と涼。
「金よこせ~、とか言ってみる?」
やけにテンションが高い夢叶。
そんな雑談をしながら病室に足を踏み入れた私達は
言葉を失ってしまった。
額周辺には薄い包帯が巻かれていて
腕にはギプスをしている。
ただそれだけかもしれないけど
普段の彼からは想像もできなかった。
彼は人の気配に気づいたのかイヤホンを外して
こちらをゆっくり振り向いた。
額周辺の包帯が左目まで巻かれている。
彼は私達の訪問が以外だったのか目を丸くしていたが
すぐに微笑んだ。
「いらっしゃい。」
「本当に蛍?全然イメージと違う…」
修也が声を漏らすと蛍は静かに頷く。
手に持っている本は暗い色の本だった。
題名は見えない。
「先客は?」
「先生と親だけ」
『だけ』というところに少しトゲがあった。
私が思っていたことを夢叶は悲しそうに聞いた。
「麗亜、来てないの?」
「…あぁ」
彼は表情を変えずに話す。
何か様子がおかしい。
本物の笑顔じゃないのに、
作り笑いに見えない。
人格が変わっている気がする。
いつもの彼はこんなんじゃなくて
上手く表せないけど、こんな感じじゃなかった。
違和感がある。
じわじわと湧いてくる実感に私は吞みこまれる。
「落ちた時に腕を若干傷つけちゃってさ。
おかげでギプス。1週間したら取れるって。
本当、参っちゃうなぁ…」
その言葉で確信に変わったと言っても過言ではない。
こんな言葉遣いじゃない。
私の好きな小説作家さんの話に出て来る
男の話し方に似ていた。
「蛍」
勇気を持って話しかけた。
彼は私を見る。
痛々しい包帯を見て泣きそうになってしまうけど
唇を噛んでこらえる。
「何があったの?」
そう言ったところで涙が溢れた。
頬を伝う。
それをしっかりと拭う。
ちゃんと言おうと思った。
「転落事故じゃ済ませられないことじゃないの?
あの日、蛍がいなくなってから麗亜もいなくなった。
麗亜が関わってるの?そうじゃなくても教えて。
本当に蛍なの?」
まくしたてるように話す私を寂しそうに見る彼。
やめて。なんでそんな目をするの…?
苦しそうなのに、どうして助けを求めないの?
お見舞いに行ってやろうか__なんて考えてる。
私一人で行くのは嫌だなぁ…と思い
(暇そうな)夢叶を誘う。すると
「男子連れて行こう。
蛍が逆ハーレムになっちゃう」
と笑って言いちょうどその辺にいた修也と、
チューバ奏者の及原涼(オイハラリョウ)について来てもらった。
及原は後輩にもそこそこウケのよい人だ。
外も中身も太っ腹。穏やかな笑い方。
悪く言うと、印象に残りづらい。
全然悪党じゃないけど。
そのメンバーで病院に行く。
受付の人に場所を聞いて病室へと向かう。
手土産にミルクティーと
限定発売のお菓子を持って。
彼の病室は個室だった。
「蛍ってVIP?」
私が聞くと
「人といるのが嫌だとか言って
個室にしてもらったんじゃん?」
と修也。
「金持ちかよw」
と涼。
「金よこせ~、とか言ってみる?」
やけにテンションが高い夢叶。
そんな雑談をしながら病室に足を踏み入れた私達は
言葉を失ってしまった。
額周辺には薄い包帯が巻かれていて
腕にはギプスをしている。
ただそれだけかもしれないけど
普段の彼からは想像もできなかった。
彼は人の気配に気づいたのかイヤホンを外して
こちらをゆっくり振り向いた。
額周辺の包帯が左目まで巻かれている。
彼は私達の訪問が以外だったのか目を丸くしていたが
すぐに微笑んだ。
「いらっしゃい。」
「本当に蛍?全然イメージと違う…」
修也が声を漏らすと蛍は静かに頷く。
手に持っている本は暗い色の本だった。
題名は見えない。
「先客は?」
「先生と親だけ」
『だけ』というところに少しトゲがあった。
私が思っていたことを夢叶は悲しそうに聞いた。
「麗亜、来てないの?」
「…あぁ」
彼は表情を変えずに話す。
何か様子がおかしい。
本物の笑顔じゃないのに、
作り笑いに見えない。
人格が変わっている気がする。
いつもの彼はこんなんじゃなくて
上手く表せないけど、こんな感じじゃなかった。
違和感がある。
じわじわと湧いてくる実感に私は吞みこまれる。
「落ちた時に腕を若干傷つけちゃってさ。
おかげでギプス。1週間したら取れるって。
本当、参っちゃうなぁ…」
その言葉で確信に変わったと言っても過言ではない。
こんな言葉遣いじゃない。
私の好きな小説作家さんの話に出て来る
男の話し方に似ていた。
「蛍」
勇気を持って話しかけた。
彼は私を見る。
痛々しい包帯を見て泣きそうになってしまうけど
唇を噛んでこらえる。
「何があったの?」
そう言ったところで涙が溢れた。
頬を伝う。
それをしっかりと拭う。
ちゃんと言おうと思った。
「転落事故じゃ済ませられないことじゃないの?
あの日、蛍がいなくなってから麗亜もいなくなった。
麗亜が関わってるの?そうじゃなくても教えて。
本当に蛍なの?」
まくしたてるように話す私を寂しそうに見る彼。
やめて。なんでそんな目をするの…?
苦しそうなのに、どうして助けを求めないの?