届かなくても、
*回想終了(希子side)*



「でもさ、おかしいんだよ」




彼が笑った。




震えていた。





「あいつのことは覚えてるんだ。


授業で習ったこともちゃんと覚えてるのに、














皆の名前も思い出せない。」






これには、絶句した。





今まで、感じたことがないほどの


心のざらつき。





話し方が何か違うのはこういうことだったのだ。



じゃあ、さっきの友達って表現も。





夢叶が頭上に植木鉢が降ってきて



彼が声を上げたおかげで助かった、と。





名前が分からない。





「でも記憶にある、植木鉢に当たりそうだったのは



多分、君だよね?」




彼は夢叶にそう聞いた。



夢叶はポカーンとしたまま頷く。



彼は申し訳なさそうに頭をかく。




「名前を教えてくれないかな?



友達だったんだから、名前は憶えないとね。




それと学校生活で俺とクラスが同じの人っている?」




「あ、はい…」





この中で私だけだ。





「今度色々教えて。




分かんないと不審がられるから」



「あ、うん…」





私達はぎこちなく2、3言会話をし、





病室を去った。
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