届かなくても、
逆襲
「あれ、夢だったのかなぁ…」
「病院から連れてきちゃったんじゃない?
コレ」
そう言って姫は手を揺らす。
幽霊の真似してるつもりだろうけど、
動きがかくかくすぎて幽霊に見えない。
只今、一日練の合間のお弁当の時間。
私は姫と食べていて。
チューバ奏者の涼と修也、
それと彼も一緒。
彼は黙々と食べている。
「そう言えば、きーさん入院してたとこって
幽霊の噂絶えないよね」
涼がニヤニヤしながら言う。
人の枕元に立って人を痛めつけるって…
「なんで生きてる人間の生活の邪魔する訳?
邪魔だから成仏してほしい」
「はっきり言うね」
彼の意見はもっともだ。
早く成仏して下さい!!
なんて幽霊に面と向かって言ったら
呪われそうだけど。
霊安室前まで連れて行ったから
幽霊がついてきちゃったとか?
「まぁ、この学校も幽霊説あるくらいだし。
先輩から聞いたことあるよ、俺」
修也が真顔で答える。
修也の冗談は分かりづらいし、
笑えない。
なんせ修也はキャラがキャラですから。
私は、最後までとっておいた大学いもを食べながら
頭上で飛び交う世間話に耳を傾けていた。