届かなくても、
その後、麗亜はお祓いをしてもらったらしい。





ただの部員という関係の私にそれを拝見する訳にはいかない。





次の日、涼に聞いても



「いや、俺も行ってないんだよね」





と答えられるばかり。






麗亜の晴れ渡った顔を見たら





結末が分かったけれど。





じゃあ、私の寝床に現れたのはお姉ちゃん?





顔の見分けがつかないから分からずじまいだけど。





でも、分からない。






麗亜はどうして、謝らないんだろう。





そういう観念って人によって違うとは思うけど




あんなにあっさりしてるのかな。






女子って分からない。






「先輩。聞いてます?」





梶山くんの声で我に返る。




「え?あ、ごめん!!



聞いてなかった!!」




「素直なのもいいですけど。





最近具合悪いんですか?





俺かなり無視されてますよ」






そんなに梶山くんのこと無視していたのか。




自分でも気づかなかった。





「嘘!!ごめん」






「穂波先輩ですか?」





一瞬言葉に詰まる。




こういう時なんて切り返せばいいんだろう。




すっかり固まってしまった私を見て




梶山くんは淡々と言った。






「遠慮なく利用していいですから。」






まるで「自分はそれでも構わない」と



言われているようだった。




気まずくて下を向く。




梶山くんの顔が見れない。





今見たら何かが崩れてしまいそうで。






「先輩。





好きになる責任もないのに




人の事好きになっちゃ駄目ですよ。絶対。」






梶山くんはしばらくして隣を去って行った。




ふわりと柔軟剤の香りを残して。





この広い教室中いっぱいに広がったこの香りは




この時の私には受け取れなかったのかもしれない。
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