2人の距離


今日も学校は平和だ。みんな同じ制服を着て、いつものようにくだらない話で盛り上がる。
だが、最近はそうもいかない。
我ら、高校3年生はこれから大きすぎる人生の分岐点を迎える。
その為、みんな一心不乱に勉強している。
私もその内の1人だ。
今は昼休み。お昼ごはんを掻きこみ、友達の美雪ちゃんに勉強を見てもらっている。

「じゃあ、まず昨日の復習から。雪中梅の作者は??」
「……えっと、鉄腸!!す、すえ…??末……末うんちゃら鉄腸!!」

優雅に、お昼ごはんを口に運んでいた手が止まり、美雪ちゃんから、笑みが消えた…

「ごめん!!ごめんなさい……」
「真面目にやって……」
「真面目にやってますって……あ、末広鉄腸か!!」
「正解。末広鉄腸…」
「「雪中梅」」

と、スパルタ美雪先生の日本文化史講座。お陰で、文化史はほぼマスターした。

「じゃあ、次は…」
「美雪ちゃん、葵くんが呼んでるよ。」
「えっ!?何しに来たの!?アイツ!!」

私の指さした方に振り向き、くわっと怒りだしながら、葵くんの方へ行く、美雪ちゃん。
葵くんは、美雪ちゃんの双子の弟。美男美女兄弟って、有名なんだ。
見ているだけで、癒される。

この双子に宙が話かけている。

『へー、宙って美雪ちゃんと葵くんとも話すんだ。』

ボーっとその光景を見ていると、双子から宙が離れ、クラスに入ってきた。
私は、視線を教科書に戻す。

「キャッ!!山崎くんだ。カッコイイな。同じクラスなんて羨ましいよ。」

隣のクラスのミーハーさんだ。
私は、教科書の文化人とにらめっこしていた。すると耳元で

「水希!こっちむーいて!!」

その声にハッとして、振り向くと、思いのほか近くにあった、宙のニッコリと口角が上がっている顔。
何だか、恥ずかしくて、そっぽを向き、素っ気なく

「なんの用??」

我ながら、可愛くないと思う。
しかし、そんな事、微塵にも気にしてない様子の宙。更にニッコリ笑って

「ちょっと手伝って欲しいからついてきて」
「えっ!?あ…うん。いいよー。」
「よかった、断られたら他に頼める人が、居なかったから、ホントに、助かった。」

『いや、その甘いマスクに声なら、誰でも断らないよ……』

なんて思う。

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